2014年10月12日日曜日

トゥデイ、トゥモロー・アンド・フォーエヴァー/TODAY, TOMORROW AND FOREVER


トゥデイ、トゥモロー・アンド・フォーエヴァー
TODAY, TOMORROW AND FOREVER
エルヴィス・プレスリーの入隊騒動をパロディ化した『バイバイ・バーディ』でキュートな魅力を振りまいて一躍スターダムに突進していたアン=マーグレット。エルヴィス・プレスリー映画史上、後にも先にも、主演級で共演した唯一の女優さん。1枚看板でしか出演しなかったエルヴィス・プレスリーの伝説的事件だった。


ロマンスの噂はあったが、妙に嘘くさく、しかし妙に本物らしく、特に女性ファンをやきもきさせただろう。
しかし伝説的TV映画『サンセット77』の主演男優さんと結婚。
『ポケット一杯の幸福』『バイバイ・バーディ』『ラスベガス万才』その後確かイタリアかスペインを舞台にしたラブ・コメディに主演した後、一転シリアスなものにしか出なかったように思う。

コケるしかないようなリメイク『駅馬車』に主演、スティーブ・マックィーンとの『シンシナティ・キッド』は有名だ。その後、ジャック・ニコルソンの『愛の狩人』では衝撃的な変身だった。


思うにアン=マーグレットも、やはり時代の波に飲まれたのだろうか。

ケネディ暗殺~ヴェトナム戦争の波間に映し出したアメリカン・ニューシネマ。暗い波はこの明るく幸福な微笑が似合った人を、荒波でしごいた末に、『愛の狩人』でのすさんだ生活の果てに男に捨てられる役柄をこなす性格女優として、ゴールデン・グローブ主演女優賞を添えて砂上に打ち上げたのだ。

その後メディアへの露出も少なく、再びあの素敵な笑顔を見せたのは、90年代だ。
ジャック・レモンのコメディで、それは老年にさしかかった熟女になっていた。

遅れてきたミュージカル・スターだったのか。

その意味でも、この『ラスベガス万才』はアン=マーグレットにとっても、本来の魅力を100%発揮した最も光り輝く映画だ。



毎日場末の映画館に通った。
体育館のシーンが最大の目当てだった。
エルヴィスだけの魅力でなかったように思っていた。

しかしいま思うと、エルヴィスをより体現するためのアン=マーグレットだったような気がする。



後に『ELVIS ON STAGE』で、一切のオブジェクトを捨てたエルヴィスにエルヴィスの正体を見てぶっ飛んだが、それに一番近いエルヴィスが、体育館のエルヴィスでなかっただろうか?

女優相手に歌う場面は数多いが、エルヴィスを表現するのでなく、曲のイメージを強調するだけ、あるいは女性ファンの願望をイメージ化するものでしかない。

しかし体育館のシーンではエルヴィスの劇映画用として制約された動きだけでは表現できずにこぼれ落ちたエルヴィスの発散するエネルギーをアン=マーグレットとダンサーが拾い上げて援護射撃、カバーして力強く、エルヴィスの人と音楽への愛をアン=マーグレットがキュートな表情に凝縮して体現、スクリーンにエルヴィスの正体に近寄って見せたように思うのだ。


『ELVIS ON STAGE』のエルヴィス、つまり本物のエルヴィスに近いのは、これとわずかに『アカプルコの海』の<ボサノヴァ・ベビー>しかなかったのではないだろうか。

それを思うと、アン=マーグレットに感謝したい気分になる。

そのアンとのデュエットでは、『ラスベガス万才』のサントラCDに収録された<The Lady Loves Me>でやっと映画の感動が楽しめたわけだが、まだあったとは驚いた!

なぜ映画で使わなかったのか、そんな野暮はこの素敵のために夕闇の砂漠に埋めよう。



l give, give you my heart
Today, tomorrow and forever
You'll always be my love

I vow we'll never part
Today, tomorrow and forever
Long as there's stars above

Our cares of life will fade away
As long as we're together
So stay, stay in my arms
Today, tomorrow and forever
You'll always be my love

l give, give you my heart
Today, tomorrow and forever
You'll always be my love
The cares of life will fade away
As long as we're together
So stay (1'11 stay)
Stay in my arms (Stay in your arms)
Today, tomorrow and forever
You'll always be my love
(Today, tomorrow and forever)
You'll always be my love

<恋の讃歌/TODAY,TOMORROW & FOREVER>のデュエット・バージョンのエルヴィスはソロバージョン以上にやさしく聴こえるのは気のせいだろうか?
いいえ、実際にやさしい。それにスローテンポだし、微妙に歌い方も違う。


OO、やさしすぎ~ッ
エルヴィスに
反則の
イエロー・カード
あげる。

いま、ひきこもりがとかく問題になる。
他者とのコミュニケーションが苦手な人たちが増加傾向にある。
ある意味でアーティストにも同様の傾向がある。

そもそも自分の内にあるものを表現する作業は少なくともその時間、他者を排除してかからないと達成できない。

自分の世界にひきこもり、想像を膨らませて行くのが正常であろう。

したがってより高みに行こうとすれば内省的にならざるを得ないのも自然である。

誰もが気にしないような些細なことが重要になることだって起こりうるし、それだけ神経がこまやかでないと素敵は創造されない。仕事に真剣になればストレスが膨大なものになるだろう。


その意味で70年代のコンサート活動はエルヴィスから創造する時間を奪い、片方で創造することを要求するという、まるでエルヴィスを二つに引き裂くような苛酷を強いた。

エルヴィス・プレスリーは、ただひとりの男として、ひきこもりたかったのではないかと、ふと想像するのだ。
物心ついてから大スターになるまで、空想する時間がたっぷりあったように。


エルヴィスは天性と精進の力で、それをステージでかろうじてやっていたのではないか。

「観客が多くても少なくても、自身のステージは彼の王国であった」と証言するように、観客は居ても居なくて、バンドすらも、自然な反応をするまでに息があえば、もはやあるがままの自分が残るだけである 。

そこでただひとりの男として過ごすことで、ようやく自分の世界を表現することを可能にした。

それにしても、それは決してエルヴィスの創造性を十分に発揮するまででなかったであろうと想像する。

ニューヨーク、マディソン・スクエアのライブでほとんど語りもなしに一途に歌い続けたエルヴィスとは対照的に、体力の疲労から語りが増える。時とともに満身創痍になりながらも耐えていたエルヴィスが浮かんでくる。

最終的に肉体の疲労もさることながら、ひきこもる場を精神的に失ったことが致命的であったのでないかと。


この美しいけれど、ありきたりな曲に対して、しかしエルヴィスが真実求めたであろう「歌詞」にこんなにも気持ちを入れて歌っているエルヴィスを聴いているとそう思わずにいられない。

そんなことを考えながら、アンと愛の意味への気配りがただようエルヴィスの他者へのやさしさを感じて、本当にこの人は優しい人だったのだなと思い直さずにいられない。



時代の変遷を超えて、「最も偉大なロックンローラー」であるとの調査結果では圧倒してトップ、数字の構成では事実上オンリーワンだ。

さらに「アメリカの文化に永続的なインパクトを与えた人」でも、エルヴィスと答えた人が90%に達した。

才能が十分に発揮されなかった、
アメリカの、世界のあのイヤな時代を、結果的に強靱に乗り越えた勝利を喜びに思う。
それは流行、時事に左右されない普遍的、根源的な「人間への愛情」の勝利である。

それこそエルヴィスが求めたものである。TODAY,TOMORROW & FOREVER


”彼は我々が慈しむ神からの大切な贈り物で、神からの才能を世界と分け合った”
              ヴァーノン・プレスリー
                       

僕の心を君に捧げる
今日も、明日も、そして永遠に
君は永遠の僕の恋人

決して別れないって誓うよ
今日も、明日も、そして永遠に
星が空に旧いているかぎり

人生の悩みなどどこかに消えてしまう
二人が一諸にいるかぎり

だからずっと僕の腕の中にいてね
今日も、明日も、そして永遠に
君は永遠の僕の恋人

(私の心をあなたに棒げます
今日も、明日も、そして永遠に
あなたは永遠の私の恋人)

人生の悩みなどどこかに消えてしまう
二人が一緒にいるかぎり

だからずっと(私もここにいるわ)
僕の腕の中にいてね(腕の中にいるわ)
今日も、明日も、そして永遠に
君は永遠の侯の恋人
(今日も、明日も、そして永遠に)
君は永遠の僕の恋人

トゥデイ・トゥモロー・アンド・フォーエヴァー
Today, Tomorrow And Forever(クリックで大きな画像)

8月16日4枚組豪華CDボックスがリリースされた。
<アイ・ニード・ユア・ラブ・トゥナイト>も収録されている。
 

日本タイトル/原題/テイク/収録日

DISC 1
1. ハーバー・ライト/Harbor Lights (alt. take 3) 1954.7.6-7
2. アイ・ガット・ア・ウーマン/I Got A Woman (alt. Take) 1956.1.10
3. シェイク・ラトル・アンド・ロール/Shake, Rattle And Roll (alt. take 2) 1956.2.3
4. アイ・ウォント・ユー,アイ・ニード・ユー,アイ・ラヴ・ユー
  /I Want You, I Need You, I Love You (alt.take 13) 1956.4.14
5. ハートブレイク・ホテル/Heartbreak Hotel 1956.5.16
6. のっぽのサリー/Long Tall Sally 1956.5.16
7. ただひとりの男/I Was The One 1956.5.16
8. マネー・ハニー/Money Honey 1956.5.16
9. アイ・ガット・ア・ウーマン/I Got A Woman 1956.5.16
10. ブルー・スエード・シューズ/Blue Suede Shoes 1956.5.16
11. ハウンド・ドッグ/Hound Dog 1956.5.16
12. 陽気に行こうぜ/Rip It Up (alt. take 14) 1956.9.3
13. ドント・フォービッド・ミー~ユー・ビロング・トゥ・マイ・ハート
  /Don't Forbid Me~You Belong To My Heart 1956.12.4
14. アイ・ベグ・オヴ・ユー/I Beg Of You (alt. take5) 1957.1.13
15. 谷間の静けさ/(There'll Be) Peace In The Valley (For Me) (alt. take 1) 1957.1.13
16. イズ・イット・ソー・ストレンジ/Is It So Strange (alt. take) 1957.1.19
17. ゴット・ア・ロット・オヴ・リヴィング/Got A Lot O' Livin' To Do (movie master take 17)   1957.1.15-18
18. ラヴィング・ユー/Loving You (alt. take 6)(movie farm scene version) 1957.2.14
19. やさしくしてね/Treat Me Nice (alt. take 6) 1957.5.3
20. ヤング・アンド・ビューティフル/Young And Beautiful (alt. take 4&5) 1957.4.30
21. 自由になりたい/I Want To Be Free (alt. take 3&4) 1957.5.3
22. さらばハイスクール/Steadfast, Loyal And True (undubbed master) 1958.2.11
23. チャンス到来/Doncha' Think It's Time (alt. take 48) 1958.2.1
24. アイ・ニード・ユア・ラヴ・トゥナイト/I Need Your Love Tonight (alt. take 4) 1958.6.10
25. アイ・ガット・スタング/I Got Stung (alt. take 16) 1958.6.11
26. ザ・フール/The Fool (alt take 1) 1959.11.14

DISC 2
1. 君の気持を教えてね/Make Me Know It (alt takes 17 & 18) 1960.3.20
2. 今夜はひとりかい?/Are You Lonesome Tonight? (alt takes 1&2) 1960.4.3
3. G・I・ブルース/G.I. Blues (alt. take 5) 1960.4.27
4. ポケットが虹でいっぱい/Pocketful Of Rainbows (alt. take 3) 1960.5.6
5. 燃える平原児/Flaming Star (alt takes 4&1) "Main" and "End" title versions from movie  1960.10.7
6. スイング・ダウン・スイート・チャリオット/Swing Down Sweet Chariot (alt. takes 2&3)   1960.10.31
7. ロンリー・マン/Lonely Man (alt. take 1) 1960.11.7
8. ゼアズ・オールウェイズ・ミー/There's Always Me (alt take 2) 1961.3.12
9. 好きにならずにいられない/Can't Help Falling In Love (alt. take 26) 1961.3.22
10. 僕は君のもの/I'm Yours (alt. take 5) 1961.6.25
11. 夢の渚/Follow That Dream (alt. take 3) 1961.7.2
12. エニシング・ザッツ・パート・オヴ・ユー/Anything That's Part Of You (alt. take 8) 1961.10.15
13. 広い世界のチャンピオン/King Of The Whole Wide World (alt. take 3) 1961.10.26
14. 今すぐ家へ帰りたい/Gonna Get Back Home Somehow (alt. take 2) 1962.3.18
15. 似合いのカップル/A Boy Like Me, A Girl Like You (alt. take 4) 1962.3.27
16. あなたにそっくり/They Remind Me Too Much Of You (alt. take 4) 1962.9.22
17. メキシコ/Mexico (alt. take 2) 1963.1.22
18. 恋の魔術/Witchcraft (alt. take 3) 1963.5.26
19. 恋の讃歌/Today, Tomorrow And Forever (alt. take 2) (duet with Ann-Margret) 1963.7.11
20. アスク・ミー/Ask Me (alt. take 2) 1964.1.12
21. 青春カーニヴァル/Roustabout (alt. take 8) 1964.4.29 & 5.14
22. 僕はあやつり人形/Puppet On A String (alt. take 10) 1964.6.10
23. 砂漠のセレナーデ/My Desert Serenade (alt. take 7) 1965.2.25
24. いつまでも愛して/Please Don't Stop Loving Me (alt. take 10) 1965.5.13
25. ここは天国/This Is My Heaven (alt. take 7) 1965.8.2
26. イエスを言うな/Never Say Yes (alt.take 1&2) 1966.2.17
27. ハイド・ザウ・ミー/Hide Thou Me (1966.?.?)

DISC 3
1.ラヴ・レター/Love Letters (alt. take 2) 1966.5.26
2. 主が我と共に歩まなければ/If The Lord Wasn't Walking By My Side (alt. take 4) 1966.5.27
3. いつも夢中/Come What May (alt. take 3&4) 1966.5.28
4. 青い涙/Indescribably Blue (alt. take 1) 1966.6.10&12
5. ミニ・スカートのお嬢さん/Long Legged Girl (alt. Master) 1966.6.28
6. 恋のルーレット/The Love Machine (alt.take 3) 1966.9.29
7. 愛しているのに/You Don't Know Me (movie version take 3) 1967.2.21
8. ビッグ・ボス・マン/Big Boss Man (alt. take 9) 1967.9.10
9. ウィ・コール・オン・ヒム/We Call On Him (alt. take 8) 1967.9.11
10. ステイ・アウェイ/Stay Away (alt. take 14) 1968.1.16
11. アメリカ魂/U.S. Male (alt. take 7) 1968.1.16
12. ワンダフル・ワールド/Wonderful World (alt. take 15) 1968.3.7
13. ギター・マン/Guitar Man (alt. take 1)(Opening version -'68 TV Special) 1968.6.22
14. 主の御許に行かん/Where Could I Go But To The Lord (alt. take 4) 1968.6.21
15. メモリーズ/Memories (stereo master) 1968.6.23-24
16. オールモスト/Almost (alt. take 6) 1968.10.23
17. イン・ザ・ゲットー/In The Ghetto (alt take 20) 1969.1.20
18. 恋はいばらの道を/True Love Travels On A Gravel Road (alt. take 2) 1969.2.17
19. 共に祈ろう/Let Us Pray (alternate master) 1969.3.5-6
20. ベイビー・ホワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ/Baby What You Want Me To Do   1969.8.22Midnight Show
21. 時のたつのは早いもの/Funny How Time Slips Away 1969.8.22 Midnight Show
22. 悲しき街角/Runaway 1969.8.22 Midnight Show
23. マイ・ベイブ/My Babe 1969.8.22 Midnight Show
24. ホワッド・アイ・セイ/What'd I Say 1969.8.22 Midnight Show

DISC 4
1. シー・シー・ライダー/See See Rider 1970.2.19 Dinner Show
2. ポーク・サラダ・アニー/Polk Salad Annie 1970.2.17 Midnight Show
3. ウォーク・ア・マイル・イン・マイ・シューズ/Walk A Mile In My Shoes 1970.2.17 Midnight Show
4. 恋へもう一歩/The Next Step Is Love (alt. take 6) 1970. 6.7
5. ライフ/Life (alt. take 2) 1970.6.6
6. スノーバード/Snowbird (alt. take 2) 1970.9.22
7. フォー・ラヴィン・ミー/(That's What you Get) For Lovin' Me (alt take 9&10) 1971.3.15
8. 別れの時まで/Until It's Time For You To Go (alt. take 5) 1971.5.17
9. 恋は愚かというけれど/Fools Rush In (alt. take 9) 1971.5.18
10. 美しき愛/A Thing Called Love (rehearsal) 1971.5.19
11. 故郷のクリスマス/I'll Be Home On Christmas Day (alt take 9) 1971.5.16
12. 故郷への道を教えて/Where Do I Go From Here (alt. take 5) 1972.3.27
13. ノー・モア/No More (alt. take 1) 1973.1.14
14. 涙で祈る幸せ/Take Good Care Of Her (alt. take 3) 1973.7.21
15. 君のいない淋しさ/I Miss You (alt. take 1) 1973.9.23
16. フィーリン・イン・マイ・ボディ/I Got A Feeling In My Body (alt. take 4) 1973.12.10
17. 俺を忘れろ/If You Talk In Your Sleep (alt. take 5) 1973.12.11
18. 約束の地/Promised Land (alt. take 2) 1973.12.15
19. 愛は遠くから/Your Love's Been A Long Time Coming (alt take 10) 1973.12.15
20. ピーシズ・オヴ・マイ・ライフ/Pieces of My Life (alt. take 1) 1975.3.12
21. フォー・ザ・ハート/For The Heart (alt. take 4) 1976.2.5
22. 何でもないのに/She Thinks I Still Care (alt. take 10) 1976.2.2-3
23. 心の痛手/Hurt (alt. take 5) 1976.2.6

2014年10月10日金曜日

胸に来ちゃった IT HURTS ME




胸に来ちゃった IT HURTS ME

エルヴィス・プレスリーの多くのファンが支持してやまないバラードの傑作 <胸に来ちゃった>を聴いたことがありますか? 

コントラストが鮮やかだ。・・・・エルヴィスの声が気持いい日々です。
とにかく気持いいのは、エルヴィスが本物だからです。
そのどれもが気持いい。何を聴いても気持いい。

日本人というのは、物資が不足する状況であっても本質や本物にこだわっていた人種ではないのかと、古都を歩いていると強く感じる。

表面が華やかになるほど、本質から離れた極端な物質主義、上っ面だけに終始するばかり、そしてその実体は恐ろしく空虚な依存体質の蔓延。そんな気がするのは間違いだろうか?

ありとあらゆる分野でそれが進み、それも限界点に達しているかのように気分が悪くなるような犯罪が相次ぐようになってしまった。
どこかで歯止めがかかるのかも知れないという希望もないわけではないけれど、それとて、ないものねだりのような気がする昨今。。。。

ロストアルバムにもならないなくなったものはどこへ行った?
百年も二百年も暮らして来た訳でないので、昔のことを云々する資格もないけれど、
テレビでふと目にする歌番組ひとつをとっても悲しくなるほど痛々しく感じるはどういうわけなのだろう。



エルヴィスの一発録りが今更ながら宝物のように思えて愛しい。
僕が聴いたなkで一番寂しい歌を歌うよ」と地球上の1メートルにも満たない暗闇から世界に向けて涙のような汗を流しながら歌っていた姿の美しさが途方もなく輝いてみえる。
エルヴィスほど歌う姿が美しい人がいないだろう。

そんなエルヴィスの楽曲に優越つけるなんて意味ないことですが、
それでも<胸に来ちゃった>あるいは<愛しているのに>とかは、エルヴィスのバラードでも最高峰だと思ってしまうのは、聴いてる自分の心象風景ゆえでしょうか。

音楽の大きな役割は、心にはあるものの、言葉にできない、イメージすらきちんと整えられない、聴き手のぼやけた輪郭に対して、表現者が「おい、こんな感じだろう」ってはっきりと形にして提示すること。

それができる曲、詩、パフォーマンスは決して多くはないが、それをやってのけるところが名演の技。

<胸に来ちゃった>は、その挑戦が聴きどころになるが、ドンピシャ、来た来たと思う方がどれだけ存在したのかはその当事者のみが知るところである。

行き場のない情念を、相手を思えばこそ、そっと包んで隠した<愛しているのに>の深い深い味わいを残したバラードとまた違い、同じバラードでも、ブラッキーな力のある声で切々を歌う<胸に来ちゃった>は、<愛しているのに>で聴かせる自分の心情を抑圧することと比べたら、ずっと複雑だ。

裂けて千切れていくといっても、裂け方、千切れ方、涙の熱さも深さもミステリアスだ。

それがこの名演をもってしてもB面にとどめた限界かも知れないが、<胸に来ちゃった>は、限界突破のエルヴィス節がさえわたって暗い闇さえ真っ赤にして絶品なのだ。

<胸に来ちゃった>は、64年1.12の録音というところがミソ。
この時期のエルヴィスにしては久しくブラッキーなR&Bなロカバラード。
「やるときはやるぜ、この程度ならいつでも」の心意気が届いて胸に来ちゃった!
そう、ただやらないだけなんだと思い知らされて震えた人は地球上に多い。

<胸に来ちゃった>とかわいすぎる日本タイトル。しかもB面(両A面扱いだけど)ともあって不運な登場だったけれど、それでも本国では全米ヒットチャート29位にランキングされた。

本物は朽ちないと証しか、いまも根強く根強く支持され続けている。
スコティ・ムーア、フロイド・クレイマーなどバックのメンバーも60年代エルヴィス一家の強力布陣、バックコーラスも忘れがたい。

恋した女性が悪い男に弄ばれている姿を、ただ観ているしかない痛みを歌って切ないが、当の女性はそれこそが満足ということもある。

人はみんな幸福になりたいと口では言うが、行動は不幸、不幸へと突き進む人も少なくない。むしろ、そちらが多いのかもしれない。
真水では生きていけない魚もいるのだ。

それゆえ、ここで歌われる心情がより一層深いのだ。
はまれば誰より苦悩し、傷つくのは心底思う男だ。
つまり、その男もまた 真水では生きていけない奴なのだ。

この世は白か黒かでは判断できない七色の摩訶不思議。
届かない思いと引き受けようのない痛み。
愛する人の人生から排除されている悲しみ。
苦悶こそ人生の醍醐味と知る。・・・エルヴィス・プレスリーの”It's Hurts Me”

胸に来ちゃった

胸が痛むよ、あいつの君に対する態度を見ると
胸が痛むよ、君が泣くのを見るのは
ボクなら裏切ったりはしない
もしも君のような恋人がいたら
胸が痛むよ,君の目にうかぶ涙を見ると

町中の噂だよ、君はバカだって
いつまでもあいつの嘘を信じて
ボクなら裏切ったりはしない
もしも君のような恋人がいたら
胸が痛むよ、君が泣かされるのを見ると

愛しすぎて.君には見えないんだね
あいつは君をもてあそんでいるだけ
君のことを気にもしていないし、愛していない
これからも愛しはしないだろう
わからないの、彼は一生変わらない

あいつは君を自由にはしない
そういう男なんだよ
でも、もしも別れを告げるなら
君のこと、待っているよ
しっかりと抱きしめられる時を待つ
おやすみのキスができる時を待つ

           (歌詞翻訳:川越由佳氏)

この世の中にはつらいこと、悲しいことがたくさんある。でも忘れることだ。忘れて眠れば朝が来る。

いつか観た映画のセリフが、通用しない現実の空の下。
胸に来てしまった人、胸に来る一歩手前で止まってしまった人、胸を突き破って遠くまで行ってしまった人・・・・どんな世の中になっても、信じるもの、信じたいものを失わずに暮らしていきたいと思う人に、とにかく聴いてもらいたい。

古都の墨絵のような石庭を前にして、遠い空の彼方から聴こえて、脳裏に響くエルヴィスの声、極上の楽しみ方である。


IT HURTS ME

It hurts me to see him treat you the way that he daes
It hurts me to see you sit aud cry
When I know I could be so true
If I had samBone like you
It hurts me to see those tears in your eyes

The whole town is talking, they're calling you a fool
For listing to his same old lies
And when I know I Gould be so true
It I had someone like you It hurts me to see the way he makes you cry

You love him so much, you're too blind to see
He's only playing a garne
He nBver loved you
He never will
And darling, don't you know he'll never change

l know that he never will set you free
Because he's just that kind of guy
But if you ever tell him you're through
l'll be waiting for you
Waiting to hold you so tight
Waiting to hiss you goodnight
Yes darling, if I had someone like you