2010年7月20日火曜日

WHAT'D I SAY / ホワッド・アイ・セイ


WHAT'D I SAY / ホワッド・アイ・セイ

 エルヴィス・プレスリーは何のためらいもなく、自然体で黒人シンガー、レイ・チャールズの1959年のヒット曲<ホワッド・アイ・セイ>をカバーしている。

 エルヴィスには白人も黒人もない。映画「ラスベガス万才」のハイライト・シーンとなった<ホワッド・アイ・セイ>は熱気ムンムン、黄色いジャケットも鮮やかに、白いR&Bが疾走する。エルヴィス・プレスリーの真骨頂だ。
人間讃歌のようだ。自分であることへの励ましのようだ。

Ah-aa (Ah-aa)
Oo-oo (Oo-oo)
Ah! (ah!). oo! (oo!)
Ah! (ah!), oo! (oo!)

 1959年2月のある日。11時になるとレイ・チャールズがアトランティックのスタジオにやってきたのは11時。バンドはすでにリハーサルを終えていた。3テイクを終えるとレイは速やかにスタジオを去った。

プロデューサーでありサウンドエンジニアであるトム・ダウドは残された8分のマスターテープの編集作業に取り掛かった。シングル盤の標準的な長さにするために切り落としていた。ジュークボックスにふさわしい長さでもある。

 エルヴィスの<ホワッド・アイ・セイ>は、ジュークボックスの前にいる若者たちをひきつれて踊り狂っているような雰囲気がする。

 <WHAT'D I SAY / ホワッド・アイ・セイ>は、レイの最高傑作といわれている。
映画「ラスベガス万才」はエルヴィス映画の最高傑作といわれている。両方最高で最高だ。

 「ラスベガス万才」シングル盤には次のように解説されている。

 映画にレコードに、飛ぶ鳥を落とす勢いのエルビス・プレスリーと、「ステートフェア」「バイ・バイ・バーディー」と、一作毎にロケットのように急上昇するアン・マーグレット、まさにハリウッドの人気を二分する勢いの二人が、広漠たるネバダの砂漠に咲き香る歓楽都市ラス・ベガスを背景に、持てる魅力を総動員して火花を散らす歌と踊りとスピードにあふれる小気味のいい作品である。

脚本は、「疑惑の影」「アンナとシャム王」「星は輝く」などのベテラン・ライターのサリー・ベンソンが書き下したもので、「バイ・バイ・バーディー」「ぺぺ」などのジョージ・シドニーが監督したが、若い両スターの初顔合わせにふさわしいきびきびした演出・編集ぶりである。

撮影はラス・ベガス及びその周辺のロケで、「バイ・バイ・バーディー」「アイヒマン追跡作戦」などのジョセフ・バイロックが担当、「ジャンボ」、「けっさくなエディ」などのジョージ・ストールが音楽をつけた。

はつらつたる数々の踊りは、デビッド・ウィンターズの振りつけで、若々しいアン・マーグレットの衣装は、ドン・フェルドのデザインになったもの。プレスリーは、ここでは自動車レーサーとして登場し、ソロで、あるいはアン・マーグレットとデュエットで、あるいはコーラスと共に、別項のように数々の歌曲を歌いまくれば、アン・マーグレットも、踊りに歌にはじめてその真価を発揮する。

この二人をめぐって、「クレオパトラ」のチェザーレ・ダノーバ、「山」「ブラボー砦の脱出」などのウィリアム・デマレスト、新人ニッキー・ブレアらが助演する。製作は、「ぺぺ」「カンカン」など、ミュージカルの得意なジャック・カミングスが、監督のジョージ・シドニーと協力。一九六三年度のメトロカラー色彩、パナビジョン作品。(十一巻-一時間二十四分)

 <ホワッド・アイ・セイに話を戻そう。レイ・チャールズは、<ホワッド・アイ・セイ>のヒットによって白人にも広く知られるようになり、このヒットで最高の移籍金と複数年契約を条件にABCレコードに移籍する。
ABCレコードでのレイはカントリー・ナンバー等も取り上げて、より広いポピュラリティを獲得する。

 カントリーとR&B、そこにあるゴスペル。
 音楽にも残酷な人間のジャンルが忍び寄る。肌の色という単純だが、単純であるがゆえの不安が恐怖を誘い、防衛が相手を傷つける。傷つけた者が御旗を立てる。その御旗を引き裂く音楽。ゴスペルの復讐だ。黒人音楽の総称がR&Bなら、その因果を引き受けた白人音楽の総称がロックンロールだった。

いい気分にさせてくれ、
今、いい気分にさせてくれよ
いい気分にさせてくれ
今、いい気分にさせてくれよ
いい気分にさせてくれ
いい気分にさせてくれ

教えて、何て言えばいい
教えて、何て言えばいい
教えて、何て言えばいい
教えて、何て言えばいい
赤いドレスの娘が見えるかい
一晩中でも踊っていられるんだ
オーライ、何て言えばいい

教えて、何て言えぱいい
教えて、何て言えばいい
教えて、今何て言えばいい
教えて、何て言えばいい
教えて、今何て言えばいい
教えて、何て言えぱいい
教えて、何て言えばいい

 何て言ったらいいのか分からないから、シェイグする。
シェイクしたら大丈夫。それは魔法の音楽だった。
ロックンロールには魔法のようなしなやかな心があったというお話を聞かせてくれたのはエルヴィス映画だったというわけだ。

ベイビー、大丈夫だよ
ベイピー、今は大丈夫だよ
ベイビー、大丈夫だよ
ベィビー、今は大丈夫だよ
ベイビー、大丈夫だよ
ベイビー、シェイグしてごらん
ベイビー、今シェイクしてごらん
ベイビー、シエイグしてごらん
ベイビー、今シェイクしてごらん
ベイビー、シェイグしてごらん
すべてうまくいくよ